11/26(水)、東京で『いきものがたりPart2』と題した生物多様性に関するシンポジウムが開催されました。当日の会場は主催者側が驚くほどの熱気。企業やNGO、行政など多様なセクターの方々にご来場いただきました。
「生物多様性」に関する国内での今後の展開が未知数で、情報のプラットフォームが定まっていないため、最新の情報をまとめて得るにはよい機会と捉えられたのかもしれません。
しかしこの盛上りにも関わらず、会場では「“生物多様性”はやっぱり分かりにくい」という意見が絶えません。(すごく分かります、その気持ち。。。)生物多様性とは何か、それがなぜ大切なのか、という説明はある意味当たり前すぎてあまりピンと来ないのかもしれません。
そこで今回は、「生物多様性と私」と題し、個人の立場でできることを通して、生物多様性を保全するということはどういうことなのか、を考えてみたいと思います。
私は普段、どう生物多様性と関わっているの?
私の普段の生活と自然の生物多様性。あんまり関わりはないわ、と思う人もいるかもしれません。でも考えてみて下さい。私たちが食べるモノ、使うモノの材料は全て自然由来です。お米も、金属も、石油でさえも。たとえ一日の中で一度も森や生き物に出会うことがなくても、意識するかしないかに関わらず、私たちは自然の生態系に頼って暮らしています。同時に、私たちのすることは常に生態系に影響を与えているのです。
どんな風に私たちの生活は生態系に影響を与えているのか?実際に、モノを通して具体的に世界を見て見ましょう。例えばいま、机の上にある携帯電話、クッキーで考えてみましょう。。。
■携帯電話の例
電子機器には様々な貴金属が使われています。東北大学の「こでんプロジェクト」のサイトを参考にしてみると、携帯には石油由来の樹脂の他、21種類の金属(レアメタル含む)が使われているそうです!

情報:こでんプロジェクトWebsite から
これら金属は、オーストラリア、アジア、南米やアフリカの採掘場から掘り出されています。その際には森林伐採や土壌の流出もあるでしょう。金属を熱して精製するためにたくさんの二酸化炭素も排出されているでしょう。またこの携帯で使う電気は東京電力さんから。東京電力は、原子力・天然ガス・石油・水力などです。原子力の燃料はカナダ等から、石油はアラブ諸国から輸入しています。
この小さな携帯電話一個を通して、なんと世界4大陸の地域のみなさま(地盤も含めた意味での生態系)にお世話になっているじゃないですか。
■クッキーの例
パッケージには、植物油や小麦粉など、実にたくさんの原材料が入っています。日本で使われている小麦粉のほとんどが輸入されていることは以前触れたので、今回は「植物油」に注目。
最近のお菓子の原材料に「植物油」と表示してあるものの多くは、熱帯性のパーム椰子から取れるパーム油だってご存知でしたか?私は先日のシンポジウムで初めて知りました。パーム油は健康志向やエコ意識の高まりと共に、食用として、また植物性せっけんやシャンプーの原材料として欠かせない材料になっています。
しかしそのニーズの高さからマレーシアやインドネシアでは栽培面積が急激に拡大して、それが熱帯林消失の一因になってしまっているそうです。いま私がこのクッキーを食べるために、オラウータンの森が失われたりしているかもしれないわけですね。。。
JBIBの事務局長をされている足立さんのブログ記事を参考までに。
「パーム油は環境に優しいといわないで」

写真:FoE JapanのWebサイトから
■今日からできること
何もかもがつながっている世界。つながりをすべて切れば問題解決かというとそれだと私たちは生きていけません。全ての生態系はお互いに依存しあって成り立っていて、私たちの生活にも、ある程度のモノは必要です。でも必要だけど、自然生態系ともできるだけいい関係もつくりたい。その対応策を二つ提案します。どちらも、まあ当たり前の話ですけれど。
まず一つは、モノを作ってくれている人たちが、生態系への影響を最小限にするべく配慮しているかどうかを確認する。それによって、おなじ1つの商品を使っても、生態系に与える影響は違ってきます。
もう一つは、自分が使うモノのフローを減らす。大切に使う。繰り返し使えるような商品を買う。どんなにエコな商品でも、適切な「使える量」をわきまえずに湯水のごとく消費したら、生態系にダメージを与えるものになってしまいます。パーム油も、生分解性で再生可能という、とても優れた材料です。しかしそれを大量に生産しようとしたことが生態系への脅威となってしまっています。(同じような現象が、バイオディーゼルの生産現場でも起こっています。)
自分が買うモノの質を生態系という視点でチェックする、そしてモノを買って捨てる量を最小限にする。それが、生態系とのいい関係づくりの一歩のようです。
同じようなつながりは、家づくりにも
小舟木エコ村に住まわれる方は、家づくりに挑戦されます。今、家づくりを検討されている方には、ぜひ家の “質と量”もチェックしていただきたいな、と思います。「家」って個人がつくるものの中では最も大きいものの一つですから、その影響も大きいはず。どんなモノ(材料)をつかって家を作るかをきちんと確認することは、安全・安心な家づくりのためにも重要です。
以下に、家づくりのおすすめ確認ポイントをいくつかご紹介したいと思います。
■長く暮らせる、適切なサイズの上質な家を
家は、木材や金属を始めとして、たくさんの材料を使って建てます。21世紀は、現在のような20~30年の周期で家をスクラップ&ビルドすることは、現実的でなくなっていくでしょう。家族にとって大きすぎない適切なサイズ、そして、構造的にしっかりした家を建てて、建てた家は、できるだけ長く大切に使いましょう。
日本の家のライフサイクルは、海外に比べて非常に短いといわれています。日本全体で、中古住宅の流通システムを確立していくことなども必要でしょうね。
■家づくりの主役、「木材」にこだわって建てる。
木材は家づくりの主役であり、山や森から供給されています。自然生態系への影響を考えると、その木が育ち、伐られた場所にも想いを馳せることが重要です。生態系の影響に配慮しながら生産された木材を探すなら以下がポイント。
① 認証を取得した木材
最も安心なのは、第三者機関の認証を受けている木材を利用することです。FSC認証や、CoC認証などいくつかあります。
② 植林された木材
認証材が手に入りにくい場合は、建材用にきちんと植林・育成されている樹木を選ぶことです。日本では、杉、ヒノキ、アカマツやパインなどが一般的です。性質が同じなら、輸送のための環境負荷も少なく、薬剤の使用履歴等も確認しやすい国産材がおすすめです。
③ 不法伐採が疑われる木材は使わないこと。
残念ながら、海外の天然林を伐採して調達される樹木も市場にはまだまだ出回っているのが現状です。それを理解して、「不適切な木材は使わない」という意志を示しましょう!樹木の適正な調達ルートの整備は始まったばかりでまだまだ不確実性は伴いますが、樹種と産出国がわかれば、ある程度の危険性を予測することは可能です。
家づくりで使う木材には様々な部材がありますから、こちらの、フェアウッドの樹木図鑑など参考にして、エコな木材選びに挑戦してみてください!
■敷地を地域のビオトープに
日本の国土は7割が山地、残りが平地だと言われています。大陸から隔離されたこの島国には山地にも平地にも固有な動植物が多数生息しています。国際NGOコンサベーション・インターナショナルは、日本のあまりの多様性の高さに、日本列島全体を生物多様性ホットスポット(生物多様性が極めて豊かな一方で、破壊の危機に直面している地域)に指定しているくらいです。
日本の平地は人が暮らす場所として大半が開発されています。日本の生物多様性を保全していくためには、わたしたちが暮らすまちの中で、動物や地域固有の草花、受粉に重要な役割を果たす昆虫や鳥など多様な生物が共生していける道をさがしていく必要があるのです。
まちは、住まい、庭、公園、会社、道路…etcのパーツからなるジグソーパズルです。公の財政難から、公園や道路に緑を配置することも敬遠され気味の今、まちの環境を作っていく重要な要素は地域の中の個々の敷地であり、会社の社用地です。これらをまちのビオトープと捉えて一緒に豊かな環境づくりをしていきましょう!
小舟木エコ村では、この地域の生き物のビオトープづくりのために、ゆったりとした敷地をご提供するとともに「庭の植栽に地域の木を植えること」や「10坪菜園で有機無農薬ガーデニング」をおすすめしています。庭と庭の緑がどんどんつながって、そしていつの日か小舟木エコ村が「人もいきものも、いきいきとくらすいのちの森」のになる日が待ち遠しいです。
参考までに、「生物多様性」について簡単にご説明
生物多様性の危機、と聞いてどんなイメージを持つかと聞かれたら、私は世界の森林伐採の問題が思い浮かびます。最も古株なテーマの一つだと思います。他にも、ブラックバスなど外来種の問題、トキやパンダ、メダカなど絶滅危惧種の問題、『沈黙の春』が指摘した農薬の問題などを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。とにかく、かなり幅広いテーマを含む言葉です。
これらの課題を一歩引いて眺めると、実はどれも「人間が生態系の働き方を十分に理解していない、または人間活動と自然の生態系との関係性が折り合わない」ために起こった問題でした。そこから「人と生態系との良好な関係性」をつくるための模索が始まり、その良好な関係の目標として、「地球の豊かな生物多様性を維持しながら人間活動を行うこと」が提案されました。
最近はさらに、人間と生態系の関係というよりも、人間も生態系の一部で、生態系のルールに則った活動を意識して行う必要がある、という捉え方が多くなってきているようです。日本人の自然観には馴染みのある考え方ですね。
■なぜ今?
最近、日本で生物多様性の保全の重要性が言われるようになった大きな理由としては、2010年に、『生物多様性条約の締約国会議(COP10)』が日本で開催され、各国が過去8年間の取組みの成果を報告しあうことになっていることがあります。
大きな流れとしては、この生物多様性を大切にしようという議論は、1970年代ころから始まっていました。それ以降、国際的なルールづくりが行われ、1992年に生物多様性条約が成立。以後、2年毎に締約国会議を行って、定期的に取組みの進捗確認や方針の策定が行われてきました。ちなみに、2008年は第9回締約国会議があった年で、開催国はドイツでした。
■日本の国としての取組み
環境省を中心として、国内での体制整備も少しずつはじまっています。2008年3月に発表した第3次生物多様性国家戦略によると、国内での課題として3つの危機を定義。
・第1の危機 人間活動や開発などによる、
生息・生育地の減少や環境の悪化など
・第2の危機 自然への人の働きかけが減ったことによる、
里山環境に暮らす生物の生息地消失
・第3の危機 外来種や化学物質などによる生態系の攪乱
さらに地球規模の課題として、以下の2点を指摘。
・地球温暖化による生物多様性への影響
・乱獲などによる世界の生物多様性の急激な減少
それらの課題に対する取組みを行っていくとしています。
生物多様性という言葉、これから2010年に向けてかなり頻繁に耳にするようになるでしょう。PRのためのコミュニケーションワードも決まったそうです。 >>「地球のいのち つないでいこう」
また、生物多様性に関する情報を発信するプラットフォームもできたそうです。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/
世界有数の技術を持って、世界中の資源を利用する日本。今後は世界一の生物多様性リテラシーを持って、新しいライフスタイル(ライフスタイルもある意味、技術であり知恵だと思います!)を発信していきたいですね。
齊藤千恵